「完璧主義」14
こんばんは。ゆきぴです。
小説の更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
うちも色々ありましたが、今日は小説を書いて気分転換したいので、更新します。
では、どうぞ。
『若松のリーチに対して坂本は臆することなく、「ほう」と言って堂々と危険なパイを切った。いわゆるツッパリというやつだ。
その後、竹林は「リーチ!」と意気揚々とパイを切ってリーチ宣言した。今回はその宣言パイでのロンはなかった。いつも竹林がリーチ宣言したパイでロンされていることが多く、かわいそうだと思っていた。
竹林はこの麻雀を根っから楽しんでいるようだった。
私の番が回ってきた。
安全なパイがない。坂本のように突っ張るか。
私は数秒考えた。
暴走とは冷静さを欠いた行動であり、無謀とは賭けに出ることである。
私は賭けに出た。
「リーチ!」私は言った。空リーチだ。いわゆるはったり。
この場では、空リーチができるかできないかルールは定まっていない。つまり、あとでもめることがあれば私に非があり、責められる可能性もあるだろう。
私は自分の勝利について考えた。
私の勝利とは、無言のはったりでみんなを陥れること。私の敗北とは、はったりがバレて私の立場が危うくなること。
私は心臓が高鳴った。これだ、この静かな高揚感。
「三軒リーチか。盛り上がってきたな!」若松は言った。
リーチをしていないのは坂本だけだ。坂本は相変わらず突っ張っている。
竹林ももちろん勝ちたいだろう。表情がいつもより生き生きとしている。
私のポーカーフェイスはどこまで通用するだろうか。
残り巡目が少ない。私はだんだん焦ってきた。
最後の一巡。
若松が露骨に「くそっ」と言いながらパイを切った。
坂本が何も言わずに切ると、坂本は一瞬私の顔を伺ったようにも見えた。
私はドキッとした。バレたのだろうか。
竹林が切った。
続いて私。最後のパイだ。
「ロンだ! 四暗刻、役満だ!」坂本が発した言葉に誰もが驚いた。
ゲームオーバー。麻雀はそこで勝敗を決し、私は負けた。
「役満かよ!? くそっ」若松は悔しがった。
竹林は勝敗がどう転ぼうがよかった、という表情をしている。不満なのではない。うれしいのだろう。
私はというと、複雑な心境だった。
結局私のはったりはバレずに済み、賭けには負けもしないし勝ちもしなかった。そのため、やりきれない思いの矛先をどこに向けてよいのかわからず、悶々とした。
麻雀が終わり、私は自分の病室のベッドの上でいわゆる自己分析というやつをしていた。
私はたまに、無意識のうちに暴走することがあるのではないだろうか。
そのせいで最終的な結果を顧みず、手段を選ばなくなっている節がある。そして手段が目的を正当化してしまっている。
それでは目的や結果とは私にとって何なのだろうか?
「なあ、あんた学生時代どうだった?」ふいに隣の若松が私に聞いてきた。
「別に。普通だが」私は答えた。
「普通じゃないからこんなところにいるんだろ?」
失礼な奴だ。
「そもそも普通ってなんだ? 青春時代を謳歌することか? だったら私は普通じゃないかもな」私は嫌味っぽく言った。
「別にそれが悪いことだとは俺は思ってないぜ。勉強が苦手な奴だっているし、友達を作るのが苦手な奴だっている。それはその人の個性だと思うぜ」
「個性か。病気も個性か?」
若松はニヤニヤして「多分な」と言った。適当な奴だ。
「なあ、お前が学生時代どんなだったか当ててやろうか?」
「学生時代って、高校か? 大学か?」
「お前、大学行ってたのか?」私は驚いた。
「失礼な奴だな。人は見かけによらないんだぜ。病気になったから今は休学中だけどな」
「じゃあ、大学時代のお前の心理分析をしてやる。お前は大学時代、大学に入ったはいいものの、浮かれていて学業より友達との交流を優先した。友達とは良い関係を築いていたが、心の中では葛藤があった。その葛藤とは自分の将来のことだ。友達を優先するか将来を優先するかでお前は意外にもかなり悩んだはずだ。なぜならお前の中では友達を裏切れば自分自身を裏切ることにつながるからだ。その葛藤はやがて病的なものにまで発展してしまった。—こんなところか」
「―当たってる。お前、なんでわかるんだ?」
私は少し考えたのち、「病気だからだ」と言った。』
続きは次回更新にて!