「完璧主義」18

お久しぶりです。ゆきぴです~

半年以上も更新をすっぽかしてしまい、申し訳ありませんでした。

モチベーションが上がらない日々が続いていました。

最近やっとやる気になりました(笑)。

 

では、小説の続きをどうぞ。

 

 

 

『朝起きると、ベッドの上で若松が何か考え事をしているような面持ちでいるのを見た。

「おい、若松。退院近いんだろ?」私は、ベッドから起き上がり、若松にそう声をかけた。

「なんでわかった?」

妄想が現実になった瞬間であり、私は何とも言えない感情に陥った。

「別に、ただの勘だけど」

「そうか、勘か」若松も何とも言えない表情になり、「なあ、あの賭けはやっぱり、俺の負けってことでいい」

「何故だ? お前が先に彼女と勝負できるんだぞ、その勝負の勝ち負けなんてどうでもいいから、勝負だけはしろ」

「いや、あいつとの勝負なんてどうでもよくなった。それより、俺は―お前と勝負がしたい」

「何言ってんだ。私との勝負にはお前が勝っただろ? それでいいだろ」

「いや、勝った気がしない。というより、勝負をしている気がしない」若松は無気力という名の重力によりベッドに沈んでいるように見えた。

若松に、勝負をしている気がしないと言われ、確かに私は賭けと称して、誤謬だらけの勝負を若松に持ち掛けたのを思い出した。

そうか、それが原因か。

「おい、お前の望む勝負っていうのは何だ?」私は若松に問いかけた。

若松はしばらく沈黙したあと、「俺は何を望んでいるのかわからない」と言った。投げやりになっている風にもとらえられる。

 

私は朝食を食べ終え、喫煙所へタバコを吸いに向かった。

喫煙所の中に入ると、いつか私を白い目で見てきた妙齢の女性が話しかけてきた。

「私、明日で退院するんです……だけど」彼女はそこで言いよどんだ。「いえ、なんでもないです」彼女は喫煙所から出て行った。

何だったのだろう? 私はタバコに火をつけるのを忘れるくらいの、軽い忘却術にでもかけられたように、唖然とした。

 

病室に戻ると、若松が退院の準備をしていた。

いくつかのボストンバッグに何日分もの着替えやら、暇つぶしの本やらをしまっている。

今日退院するわけでもないのに、若松らしくなく念入りに準備している。

「お前がいないと、麻雀ができなくなるじゃないか」竹林が言った。

「シャバでやろうぜ」若松が意気揚々と言った。

「ここでやるから面白いんだろ?」竹林が冗談にも聞こえるようなことを言った。

「馬鹿なのか? お前はまだ入院の必要がありそうだな」若松は笑いながら言った。

先ほどの無気力そうな表情の若松とは打って変わって、今は変な薬でも看護師に打たれたかのようにハイになっている。

「なあ、若松」竹林が真剣な表情で言った。

「なんだ? あのショートケーキの感想か?」若松が思い出したかのように含み笑いをしながら言った。

「違う。ケーキは台無しになったが、人生は台無しにしたくない。俺の将来のことだ。ちょっと相談に乗ってもらいたい」

「なんだよ、相談って」若松は面倒くさそうだった。

「お前の彼女さん、雀荘で働いてるんだろ? 実はちょっと興味あるんだ」

「俺の彼女か?」

「違う。人の女を取ったりしないよ。じゃなくて、雀荘だよ雀荘

「ああ。もしかしてお前、働きたいのか?」

「ダメかな? お前の伝手で紹介してくれないか?」

「懲りないな、お前。雀荘はガラの悪い連中ばっかりだぞ。お前みたいに気の弱い奴は気圧されて仕事にならないぞ」

「十分身に染みてわかってるよ。—だからだよ。そういう連中を返り討ちにしてやりたいのさ」竹林は腕っぷしを見せるような素振りで言った。

「一応言っとくけど、接客業だからな。—そういや、お前。あの時何があったかまだ詳しく聞いてないぞ。言いたくなかったらいいけど」

若松にそう言われて、竹林は事の真相を言おうか言うまいかためらっているようだった。少し渋ったのち、竹林は口を開いた。

「ああ、話すよ。—俺の親父だよ。俺の親父、ギャンブル依存症なんだ。母親は汗水たらして働いてるっていうのに、親父ときたら……でもまさか、あそこで居合わせるとはな。俺にももしかしたらその血が流れてるのかな」

私と若松は何となく察した。

「『てめぇ! 何でここにいやがる!』って。俺もカッとなって親父を殴ろうとした。だけど返り討ちにされた」竹林は殴られた頬の痛みを思い出しているかのようだった。

「だから、そういうやつらを今度はお前が返り討ちにしてやりたいんだな?」若松は合点がいったように言った。

竹林は首でうなずいた。

私はそこで、あることを閃いた。』

 

 

 

続きは次回更新にて!

 

「完璧主義」17

 

ゆきぴです! 更新がだいぶ遅れてしまい、申し訳ありません。

 

では、続きをどうぞ!

 

 

『イルミネーションの光をあちらこちらで目にするが、私には目がちかちかするだけで、何の高揚感も感じない。

今日はクリスマスだというのに、ここでは祝福や福音めいたものは何もない。

が、シャバにいたからといって、毎年何かめでたいことがあるわけでもないのだ。

「おい、小説の続きはどうした?」私の担当編集者にでもなったつもりなのだろうか。それとも単に小説の続きが気になるだけだろうか。若松は私を急かした。

病室の月めくりカレンダーに、誰がつけたかわからない25日の赤ペンの丸が目立った。この丸を付けたやつはきっと、イエスがどれだけすごいことをした偉人か知っているのだろう。

「世界で一番読まれている本は何か知っているか?」私は言った。

「聖書だろ?」若松は自慢げに言った。あ、そういや今日クリスマスだな、と若松は呟いた。

「その通りだ。だからお前も聖書を読め」私はメモに、聖書とは程遠い妄想譚を書きなぐっていた。

「なんだその理屈。イエスが喜んでも、俺が発狂しちまう」

「もし、世界で一番読まれている本が聖書じゃなくて、私の書いた小説だったとしても、お前は発狂するか?」

若松は神妙な顔つきになった。

「さあな。俺だけじゃなくみんな発狂するかもな」

私は思わず声に出して笑ってしまった。「だったら、お前は私の小説の続きなんかより、聖書をありがたく読んでいた方が有意義だろ」

「あんたはそれでいいのかよ」

今の若松とのやり取りで私は察していた。私には世の中の理屈は通用しないのだ。

例え世の中の人の大半が、狂気的なものをありがたく読んで正気を保っていようが、私は狂気的な思想を持って正気を保っている方が人生をまともにやる過ごせるのである。

小説家になろうとする人なんて、大体みんなそんな考えだろ」

「つまんないねー」若松は言った。

”つまんないねー”の言葉の意味には、「お前はつまらない人間だ」という意味にもとらえられるが、「こういうつまらない人間がいる世界がつまらない」という意味にもとらえられる。

若松は言葉に深みを持たせない人間なので、無意識に相手を傷つけてしまうことがあるということを自覚しなければならない。

「ところでお前の彼女さんはクリスマスに会ってくれないのか?」私はずけずけと聞いてみた。

「ああ、雀荘でクリスマスのイベントがあるから忙しいんだとよ」

雀荘ねえ。—なあ、雀荘って儲かるのか?」

「そりゃあ、雀荘だけじゃなくどこの店も客商売なんだから。客が入れば儲かるだろ」

「まあ、そういうもんか」私はそっけなく言った。

 

「おい、そういえば竹林はどうした?」若松が喫煙所から病室に帰ってきて、思い出したようにふと言った。午後のおやつタイムの時間であった。

すると、ちょうどひょっこりと竹林が病室に帰ってきた。

「おい、どこ行ってたんだ」若松は聞いた。

「外出だよ。ほら今日クリスマスだろ? ケーキ買ってきた」竹林は、買ってきたイチゴのショートケーキを見せびらかした。

「めでたいやつだな。俺にもよこせ」

「駄目だよ。そういうやり取りは禁止されてるだろ。それに俺の分しか買ってきてない」

「馬鹿言うな。じゃあせめてイチゴくらい良いだろ」若松は図々しくケーキの一部分でもせしめようとしている。

「『せめて』の意味わかってるか? 妥協するのに、なんでメインのイチゴを持ってこうとするんだよ」

竹林も負けじと、買ってきたケーキをすぐむしゃぶりつこうとした。

すると竹林の持っているケーキを、若松は両手で勢いよく竹林の顔に押し当てた。

そこへ看護師がやってきて、「若松さん。お話がありますので—」と言って竹林の方を見ると、生クリームだらけの顔になっていた。

「あら、竹林さん。おいしそうにケーキを食べますね」と看護師は言った。

若松は大笑いした。

「面談室で今話せますか?」看護師は笑っている若松に続けて言った。

「ああ、はい—竹林、ケーキの感想後で聞かせてくれ」若松は去り際にそう言った。

「覚えてろよ」竹林は生クリームだらけの口の周りを、自分でぺろぺろ舐め回しながら言った。

確かにおいしそうに食べている、と私は思った。』

 

 

続きは次回更新にて!

 

 

「完璧主義」16

 

『若松と別れた後、私は自分の病室へ戻った。

何故か創作意欲がわいたので、私は小説を書くことにした。

今日変な夢を見たせいだろう。夢を小説にして書きたいくらいだ。

しかし、私が書きたいのは夢のような幻想的な世界ではなく、狂気のようなフィクションであり、それを現実と錯覚するかのような妄想である。

「完璧主義」とは病気であり狂気なのだ。

私はいつしか正気と狂気の狭間を行ったり来たりしていた。

それでも世界は変わらない。

人は狂うと現実が見えなくなる。現実がどうでもよくなる。

しかし、大事なのは自分だということ。それを忘れてはいけない。

私は気が付くとペンを走らせていた。

【完璧主義】

【「私」は精神科医ではないので精神のすべてを知っているわけではないが、それでも敢てすべての精神科医アイロニーを送りたい。所詮「あなた」もただの人間なのだ。他人に生き方を教えて治療することなど不可能なのだ。

この物語は「私」が「あなた」に送るサーカスティックであり、「私」も「あなた」であるという自己啓発を示した物である。】

 

私はタバコを吸いに行った。吸っている最中も小説のことを考えていた。

病室へ戻ると若松が面会から戻ってきていた。

私は徐々に妄想の世界から現実の世界へとフェードインしていた。

「なんだ、これ?」

若松が私の書いた小説を勝手に読んでいた。

「あんた、難しいこと書いてるな。これ小説かなんかか?」若松は言った。

「おい、勝手に読むな」

「いいだろ、この前のお返しだ」

この前? 私は何のことだと思ったが、すぐに合点がいった。

例の彼女が載っている新聞のことだ、と。

それにしても、お返しにしてはひどい仕打ちではないかと思った。

「今どきこんなこ難しい小説流行んないぜ」と若松は言った。

「お前には関係ないだろ。—それより面会はどうだったんだ?」私は言った。

「ああ、相変わらずぐちぐち言われたよ。こっちは病人なんだからもっと労ってほしいぜ」

「ああ、そっか」私は適当に相槌を打った。

「『早く私と勝負したいのはわかるけど、病院のなかでくらい麻雀のことばっかり考えないでゆっくり休みなよ』ってさ」

私は思わず笑ってしまった。

若松の気持ちもわからないでもない。

ここにいると、もっと病気になってしまうのではないかというくらい暇なのだ。

だから、みんな暇をつぶすために麻雀をしたり、将棋をしたりするのだ。

「まあ、彼女もお前のことが心配なんだろ。良かったな」

「ふん」

また若松は粋がった。

「トイレ漏れそうだ」と若松はついでのように言った。そしてまた日本語がおかしい。

今日はもう小説を書けそうになかった。

また明日書くのを楽しみにしてよう。』

 

 

続きは次回更新にて!

「完璧主義」15

 

 

『いつもと違う夢を見た。

私は仏間にいた。そこにある父親の遺影のようなものを見ていたら、幼い弟がやってきて仏壇を金槌で壊し始めた。そこへ何人か男の人たちがやってきて、仏壇を撤去し始めた。一人の車いすに乗った聡明そうな男が私に言った。

「覚えてないか? あれは君が★&?◆#▲の時だ。君と私は◆&▼%¥✖◇■?&だったんだ」

そして私は衝撃を受けた。

気づくと傍にいた親戚のおばが、「けん。通報しよう」と泣きながら言った。

車いすの男に指示されて動いた仲間らしい男がおばを目隠ししてどこかへ連れて行った。

そこで目が醒めた。ひどい寝汗をかいていた。

水が飲みたい。

洗面所に行き、水を飲んで顔を洗った。

鏡に映った自分を見ると、なぜか自分ではない誰かの顔を見ている気分になった。

自分のベッドに座って時計を見ると、朝の五時半だった。起床時間ではない。

完全に目が醒めてしまったので、起床時間まで夢の意味を考えているには丁度いい時間だったかもしれないが、私の本能がそれを逆らった。

夢を見たことがなかったことのように、鮮明だったはずの夢の光景が消されていた。

私は夢分析を独学で学んでいたので、夢を見た後どうするべきかも知っている。

なるべく、夢の内容に近い表現や言葉を選んでノートに書いておくのだ。

しかし、脳内の情報収集能力が混濁した情報を処理できずにフリーズした。

壊れたパソコンが自分の力で起動できないような感覚だ。

私は諦めて、隣の若松の阿呆みたいな寝顔を見ていた。

 

私は喫煙所でタバコを吸っていた。そこへ若松がやってきた。

「昨日のあんたの心理分析だけどさ、あの分析は当たってるけどおおざっぱだよな」若松は言った。

私は今、若松を分析するよりも今日見た夢のことを分析したかったのだが、どうしても思い出せず、もやもやした気分でタバコを吸っていた。タバコの箱が空になった。

「人間ってのは今の現状を言い当てられるよりも、知られていない過去がどうだったかを言い当てられる方が衝撃的なんだよ。だから私はお前の過去を分析してみた」私は言った。そして喫煙所を出ようとした。

「確かにそうかもな。—ああ、その箱くれよ」若松は私の空になったタバコの箱を指さして言った。

「何に使うんだ?」

「ああ、渋谷をおちょくるんだよ」若松は含み笑いをして言った。

 

病室に戻った。

私一人だけしかいないだろうと思っていたが、例の将棋好きの患者、川谷礼二が気配を殺しているかのようにベッドの横に突っ立って窓の外を見ていた。

何を見ているのだろうか?

川谷は私を見るとすぐに目を逸らし、ベッドに潜った。

私も外の景色を矯めつ眇めつしてみた。

病院の入り口を見てみると、いつものように人の往来があるのだが、私の記憶が一人の女性を捕捉した。

川谷をちらりと覗き見ると、少し顔が赤くなっていた。

なるほど、と私は合点がいった。

あれは若松の彼女だ。

 

「会いたくないのか? もうすぐ来るぞ」私は若松にそう言った。

「会いたくない訳じゃない。面倒くさいんだよ」

「何が面倒なんだよ?」

「面倒っーか、なんつーか、退院するまで会いたくないんだよ」

「結局会いたくないんだろ」私は思わず笑ってしまった。

多分若松は、あの時自分から話に輪をかけたのに向こうから会いに来られたので、格好がつかないのだろう。

「あの賭け覚えてるか?」私は言った。

「ああ、覚えてる。どっちが先にここから出て、あいつと闘うかだろ?」

「私は自分に賭けた。どういう意味か分かるだろ? お前はプライドを懸けて私と勝負してるんだよ。つまり私が勝てば、お前は彼女にも私にも負けたことになる」

「だから? 何が言いたいんだ?」若松は堂々としている。

「私が勝てば彼女をどうしようと勝手だろ? お前もそのつもりで賭けに乗ったんだろ?」

「ふん」若松は鼻を鳴らした。粋がっているのか、あまり動じない。男としての威厳を見せているつもりなのだろうか。

私は実際、若松の彼女をどうするつもりもないが、若松の反応が見たかっただけだった。

「若松さん―面会です」詰所から出てきた看護師が言った。

「はい」若松は無表情で言った。これから彼女に会いに行く顔とは思えなかった。』

 

 

続きは次回更新にて!

「完璧主義」14

 

こんばんは。ゆきぴです。

小説の更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

 

うちも色々ありましたが、今日は小説を書いて気分転換したいので、更新します。

 

では、どうぞ。

 

 

 

『若松のリーチに対して坂本は臆することなく、「ほう」と言って堂々と危険なパイを切った。いわゆるツッパリというやつだ。

その後、竹林は「リーチ!」と意気揚々とパイを切ってリーチ宣言した。今回はその宣言パイでのロンはなかった。いつも竹林がリーチ宣言したパイでロンされていることが多く、かわいそうだと思っていた。

竹林はこの麻雀を根っから楽しんでいるようだった。

私の番が回ってきた。

安全なパイがない。坂本のように突っ張るか。

私は数秒考えた。

暴走とは冷静さを欠いた行動であり、無謀とは賭けに出ることである。

私は賭けに出た。

「リーチ!」私は言った。空リーチだ。いわゆるはったり。

この場では、空リーチができるかできないかルールは定まっていない。つまり、あとでもめることがあれば私に非があり、責められる可能性もあるだろう。

私は自分の勝利について考えた。

私の勝利とは、無言のはったりでみんなを陥れること。私の敗北とは、はったりがバレて私の立場が危うくなること。

私は心臓が高鳴った。これだ、この静かな高揚感。

「三軒リーチか。盛り上がってきたな!」若松は言った。

リーチをしていないのは坂本だけだ。坂本は相変わらず突っ張っている。

竹林ももちろん勝ちたいだろう。表情がいつもより生き生きとしている。

私のポーカーフェイスはどこまで通用するだろうか。

残り巡目が少ない。私はだんだん焦ってきた。

最後の一巡。

若松が露骨に「くそっ」と言いながらパイを切った。

坂本が何も言わずに切ると、坂本は一瞬私の顔を伺ったようにも見えた。

私はドキッとした。バレたのだろうか。

竹林が切った。

続いて私。最後のパイだ。

「ロンだ! 四暗刻役満だ!」坂本が発した言葉に誰もが驚いた。

ゲームオーバー。麻雀はそこで勝敗を決し、私は負けた。

役満かよ!? くそっ」若松は悔しがった。

竹林は勝敗がどう転ぼうがよかった、という表情をしている。不満なのではない。うれしいのだろう。

私はというと、複雑な心境だった。

結局私のはったりはバレずに済み、賭けには負けもしないし勝ちもしなかった。そのため、やりきれない思いの矛先をどこに向けてよいのかわからず、悶々とした。

 

麻雀が終わり、私は自分の病室のベッドの上でいわゆる自己分析というやつをしていた。

私はたまに、無意識のうちに暴走することがあるのではないだろうか。

そのせいで最終的な結果を顧みず、手段を選ばなくなっている節がある。そして手段が目的を正当化してしまっている。

それでは目的や結果とは私にとって何なのだろうか?

「なあ、あんた学生時代どうだった?」ふいに隣の若松が私に聞いてきた。

「別に。普通だが」私は答えた。

「普通じゃないからこんなところにいるんだろ?」

失礼な奴だ。

「そもそも普通ってなんだ? 青春時代を謳歌することか? だったら私は普通じゃないかもな」私は嫌味っぽく言った。

「別にそれが悪いことだとは俺は思ってないぜ。勉強が苦手な奴だっているし、友達を作るのが苦手な奴だっている。それはその人の個性だと思うぜ」

「個性か。病気も個性か?」

若松はニヤニヤして「多分な」と言った。適当な奴だ。

「なあ、お前が学生時代どんなだったか当ててやろうか?」

「学生時代って、高校か? 大学か?」

「お前、大学行ってたのか?」私は驚いた。

「失礼な奴だな。人は見かけによらないんだぜ。病気になったから今は休学中だけどな」

「じゃあ、大学時代のお前の心理分析をしてやる。お前は大学時代、大学に入ったはいいものの、浮かれていて学業より友達との交流を優先した。友達とは良い関係を築いていたが、心の中では葛藤があった。その葛藤とは自分の将来のことだ。友達を優先するか将来を優先するかでお前は意外にもかなり悩んだはずだ。なぜならお前の中では友達を裏切れば自分自身を裏切ることにつながるからだ。その葛藤はやがて病的なものにまで発展してしまった。—こんなところか」

「―当たってる。お前、なんでわかるんだ?」

私は少し考えたのち、「病気だからだ」と言った。』

 

 

続きは次回更新にて!

今の時代に必要な「思想」

 

こんばんわ。ゆきぴです。

今回は宗教や思想について語ろうと思います。

 

 

今、世の中は大変なことになっています。

こういう時こそ、今自分にとって何が必要なのか見極めることが大事だと思います。

自分の身が大事なら自分の身は自分で守ることがまず第一です。

 

とはいえ、ウチもいろいろありましたが、本当に思うことは「助け合いの精神」は大事だと思います。

医療従事者の方々にも本当に感謝しています。

ご迷惑をかけてしまっている部分もあります。

親戚の方たちやサポートしてくれる方々にもお世話になっています。

 

こういう時に、お互いがお互いを支え合うことは本当に大事だと思います。

 

自分が大事だと思うもの、想うことは大切にするべきです。

もちろん自分自身の「思想」も。

 

世の中が混乱している今は、誰かを信じたり、誰かを思いやったりすることは困難なことかもしれません。

ですが、自分が大事にしているものを大事にしないでどうやって生きていくのでしょうか。

 

例えば自分が誰かを愛している。その人がいないと生きていけない。

それなら、その人を一番大事にするべきです。

もちろん、人じゃなくてもいいです。ものでもいいです。お金でもいいです。宗教や思想でもいいです。

その人にとって大事なものを大切にするのです。

 

前回、僕は宗教の存在を否定するようなことを書いたかもしれません。

ですが、人の信仰を否定することはできません。

その人がそれ無しじゃ生きていけない、というのなら僕は僕の考えを他人に押し付けません。

 

今、本当に必要なものは何なのかをよく考えてください。

人が信じられないなら、自分を信じてください。

自分さえ信じられないのなら、宗教にすがっても結構です。

 

ですが僕は思うのです。「思想」は大事だと。

あえて「」をつけます。

思想とは自分の思想。

「思想」とはみんなの思想。

 

つまり、思想<「思想」です。

自分だけの思想というものは、それも大事なのですが、偏りすぎた思想は危険です。

「思想」は人と人をつなぐ唯一の思いと想いです。

「思い遣り」や「愛」と呼べるのかもしれません。

 

エスが愛を謳って世界に広めようとしたものに似ているのかもしれません。

 

しかし、

宗教<「思想」

だと僕は思います。

思想の中に宗教が含まれているのであり、宗教が思想を含んでいると勘違いしている人たちがたくさんいると思うのです。

エスが神か人間かなんてどうでもいいです。

 

 

はっきり言います。

エスが神だと思う人たちは宗教が思想を含んでいると思っている人たち。

エスが人間だと思う人たちは思想の中に宗教が含まれていると思っている人たちです。

 

世の中を見てください。

エスが神ならこんな世の中になるはずがないと思うのです。

人間だから過ちをおかしたり、失敗したりするのです。

 

 

すいません。話しが大げさになりました(笑)

 

ともかく世の中大変ですが、自分と自分の大切なものを大事にしてください。

 

ではまた次回!

 

 

だいじょばない

 

こんばんは。ゆきぴです。

 

数日前、母が自殺未遂をしました。

 

首を吊って自殺を図ろうとしたのです。

母を発見して手を触ったとき、手が冷たく、眼には全く生気が感じられませんでした。

あの冷たさや、母の表情は一生忘れられないと思います。

 

未遂で終わったのが、不幸中の幸いだったのかもしれませんが、

それでも、やりきれない思いはあります。

 

僕はその時、少し気が緩んでいました。

前日の夜から母と少し話はできていましたが、やはり「殺して、殺して」としか言ってくれません。

今まで毎日その繰り返しだったので、僕たちも限界でした。

 

退院する際は、病院から「もう大丈夫です」と言われたから退院させたのに、

何が大丈夫だったんでしょうか。

病院側も出来ることはしたのだと思いますが……

腹が立ちます。

病院にではありません。

母の精神基盤を作り上げた信仰にでもありません。

母の精神基盤を作り上げた、生まれ育った環境にでもありません。

もちろん、自分を責めたりもしました。

強いて何に腹が立っているかと言われたら、

母をここまで苦しめた「目に見えない何か」だと思います。

 

誰が悪いとか、自分が悪いとか、もうたくさんなんです。

気が狂いそうです。

 

今日母方の親戚と、母のことで話をしました。

母の実兄と実妹です。

話したいこと、というより、話さなければいけないことはたくさんありました。

しかし、僕の口からはあまり話せませんでした。

口下手、というせいもありますが、

今までの疲れもあったせいでした。

 

母方の親戚一同には心配をかけてしまっています。

「大丈夫かい?」と聞かれたら、僕はなんと答えるのが正解なのでしょうか。

正直に答えるのが正解か、気丈を装うのが正解か。

多分正解なんてないのでしょう。

 

 

 

誰のせいにしてもいいし、自分を責めたりもしていいと思います。

でも、結局負の連鎖でしかありません。

僕の憤りや、自分や誰かへの呵責は確かに自分の中で存在します。

それを消化しなければ前に進まないかもしれません。

 

小説や映画、フィクションの綺麗ごとが現実にも当てはめられたらそんな楽なことはありません。

「現実を見ろ」と自分に言い聞かせたり「逃げていいんじゃないか」と自分で自分を慰めたり、

なぜ人間はこうも一瞬一瞬の心情が多面的でいて多岐にわたるのでしょうか。

精神が発達したせいで「こころの病気」が付きまとい、人間は苦しんでいます。

自殺されてしまう人も増えています。

 

 

 

母の自殺を未然に防げて良かったです。

そうです。

それで良かったのです。

それで良かったことにしなければ何が悪かったのでしょうか。

 

 

今回のことで、また母は入院してしまいましたが、

きっと母は元気になって帰ってくると信じて待ちます。

その時、お互い成長して元気になった姿を見せたいです。

僕たちに出来ることはしたいと思っています。

 

 

だいじょばないけど……

だいじょうぶ。

 

では、また次回。