「完璧主義」18

お久しぶりです。ゆきぴです~

半年以上も更新をすっぽかしてしまい、申し訳ありませんでした。

モチベーションが上がらない日々が続いていました。

最近やっとやる気になりました(笑)。

 

では、小説の続きをどうぞ。

 

 

 

『朝起きると、ベッドの上で若松が何か考え事をしているような面持ちでいるのを見た。

「おい、若松。退院近いんだろ?」私は、ベッドから起き上がり、若松にそう声をかけた。

「なんでわかった?」

妄想が現実になった瞬間であり、私は何とも言えない感情に陥った。

「別に、ただの勘だけど」

「そうか、勘か」若松も何とも言えない表情になり、「なあ、あの賭けはやっぱり、俺の負けってことでいい」

「何故だ? お前が先に彼女と勝負できるんだぞ、その勝負の勝ち負けなんてどうでもいいから、勝負だけはしろ」

「いや、あいつとの勝負なんてどうでもよくなった。それより、俺は―お前と勝負がしたい」

「何言ってんだ。私との勝負にはお前が勝っただろ? それでいいだろ」

「いや、勝った気がしない。というより、勝負をしている気がしない」若松は無気力という名の重力によりベッドに沈んでいるように見えた。

若松に、勝負をしている気がしないと言われ、確かに私は賭けと称して、誤謬だらけの勝負を若松に持ち掛けたのを思い出した。

そうか、それが原因か。

「おい、お前の望む勝負っていうのは何だ?」私は若松に問いかけた。

若松はしばらく沈黙したあと、「俺は何を望んでいるのかわからない」と言った。投げやりになっている風にもとらえられる。

 

私は朝食を食べ終え、喫煙所へタバコを吸いに向かった。

喫煙所の中に入ると、いつか私を白い目で見てきた妙齢の女性が話しかけてきた。

「私、明日で退院するんです……だけど」彼女はそこで言いよどんだ。「いえ、なんでもないです」彼女は喫煙所から出て行った。

何だったのだろう? 私はタバコに火をつけるのを忘れるくらいの、軽い忘却術にでもかけられたように、唖然とした。

 

病室に戻ると、若松が退院の準備をしていた。

いくつかのボストンバッグに何日分もの着替えやら、暇つぶしの本やらをしまっている。

今日退院するわけでもないのに、若松らしくなく念入りに準備している。

「お前がいないと、麻雀ができなくなるじゃないか」竹林が言った。

「シャバでやろうぜ」若松が意気揚々と言った。

「ここでやるから面白いんだろ?」竹林が冗談にも聞こえるようなことを言った。

「馬鹿なのか? お前はまだ入院の必要がありそうだな」若松は笑いながら言った。

先ほどの無気力そうな表情の若松とは打って変わって、今は変な薬でも看護師に打たれたかのようにハイになっている。

「なあ、若松」竹林が真剣な表情で言った。

「なんだ? あのショートケーキの感想か?」若松が思い出したかのように含み笑いをしながら言った。

「違う。ケーキは台無しになったが、人生は台無しにしたくない。俺の将来のことだ。ちょっと相談に乗ってもらいたい」

「なんだよ、相談って」若松は面倒くさそうだった。

「お前の彼女さん、雀荘で働いてるんだろ? 実はちょっと興味あるんだ」

「俺の彼女か?」

「違う。人の女を取ったりしないよ。じゃなくて、雀荘だよ雀荘

「ああ。もしかしてお前、働きたいのか?」

「ダメかな? お前の伝手で紹介してくれないか?」

「懲りないな、お前。雀荘はガラの悪い連中ばっかりだぞ。お前みたいに気の弱い奴は気圧されて仕事にならないぞ」

「十分身に染みてわかってるよ。—だからだよ。そういう連中を返り討ちにしてやりたいのさ」竹林は腕っぷしを見せるような素振りで言った。

「一応言っとくけど、接客業だからな。—そういや、お前。あの時何があったかまだ詳しく聞いてないぞ。言いたくなかったらいいけど」

若松にそう言われて、竹林は事の真相を言おうか言うまいかためらっているようだった。少し渋ったのち、竹林は口を開いた。

「ああ、話すよ。—俺の親父だよ。俺の親父、ギャンブル依存症なんだ。母親は汗水たらして働いてるっていうのに、親父ときたら……でもまさか、あそこで居合わせるとはな。俺にももしかしたらその血が流れてるのかな」

私と若松は何となく察した。

「『てめぇ! 何でここにいやがる!』って。俺もカッとなって親父を殴ろうとした。だけど返り討ちにされた」竹林は殴られた頬の痛みを思い出しているかのようだった。

「だから、そういうやつらを今度はお前が返り討ちにしてやりたいんだな?」若松は合点がいったように言った。

竹林は首でうなずいた。

私はそこで、あることを閃いた。』

 

 

 

続きは次回更新にて!