「完璧主義」11

 

こんにちは。 ゆきぴです!

更新が大変遅れてしまいすいません!

 

 

 

『きっとプロになりたいというのは麻雀のプロのことだろう。

それにしてもこの二人は一体どういう関係なのだろうか。

「あんた、ここがどこだか分ってる?」と女は言った。

「地理的には駅北口から見て大体、真正面の方角に位置するとこで、社会的に言えば、掃きだめとでも言ったところか」若松が言った。若松はそこで私に気づき、「おや、にいぬまけんじさん。どこへ行くんですか?」とわざとらしく言った。

新沼謙治?」女は演歌歌手の名を復唱した。

私は面倒なことになると思い、そそくさと去って行こうとした。

「おい、待てよ。—紹介する、俺の彼女だ」と言って若松は隣の女を紹介した。

女は迷惑そうにして、初めましてと、軽く挨拶をしすぐ若松のほうに向きなおった。

女も迷惑なら私も迷惑なのだ。だがプロになりたい云々の話は少し興味があったので、後で若松から事情を聞き出そう。私は外に向かった。

「あんたが私の彼氏面するのはいいけど、プロになりたいんなら、あんたが私のところに嫁がなきゃいけないわよ」最後に聞こえた女の言葉がそれだった。

 

私はタバコをワンカートン買った。これだけあれば大分持つだろう。

気晴らしがしたいとは思ったが、結局何をしたいのか自分でもわからず、ものの十分ほどで買い物は終わり、病院へ戻った。

外来の待合室にまだ例の二人がいた。

「わかった。俺がシャバに出たら勝負しろ!」若松が大声で言った。

「わかったわよ。—じゃ、私そろそろ行くわ」

絶対だからな、と若松が言ったタイミングで若松と私は同時に詰所の中に入った。

女が手を振り、独特の金属音のドアが閉まる音がする。それはシャバとこの″掃きだめ"を別つ証の音でもある。

二人は看護師からボディチェックを受け、病棟の中に入った。

「おい、プロ雀士の彼女がいるなんて聞いてないぞ」私は言った。

「お前、新聞読んだな!?」

「読んでくれと言わんばかりに放っておいてあったからな」

若松はため息をつき、その辺の椅子に座り、「あいつとは幼馴染なんだよ。近所に雀荘があって、そこが彼女の家だ」と言った。

「そうか。で、お前がプロになりたいっていう話は何だ?」

「ああ、その話か。—麻雀ってさ、どうしても悪い賭け事のイメージがあるだろ。それを払拭するために、俺は運の要素を排除した完全な実力を重視した麻雀で勝負したいんだ。だけど、俺とあいつの考え方は違う。競技団体に入ろうにも、方針が違うから俺は結局あいつと敵対することになる。そのことでもめてたんだよ」

「なるほど」私は相槌を打った。「シャバに出たらあの女流雀士と勝負するのか?」わざと女流雀士という言葉を使った。

「そのつもりだ」

私は良いことを思いつき、「賭けてもいいか? 運と実力どっちが勝つか」と若松に提案した。

「どういうことだ?」

「私が先にここから出られたら、私がお前の代わりにあの女流雀士と勝負する。お前が先にここから出られたらお前が彼女と勝負する。私は自分が先にここから出られる方にかける」

「意味が分かんないぞ。お前」

「私とお前、ここに入ったのはほぼ同時期だっただろ。だからどっちが先にここから出られるかは実力という訳だ。私は自分が先に出られる方に賭けた。私が彼女と勝負してなおかつ勝てたとしたら運が味方したとしかいい言いようがないだろ? もちろんお前が先に出て彼女と勝負すればいいだけの話だ。それなら実力の勝ちだ」

若松は含み笑いをし、「いいだろう。その賭けに乗ったぜ」と言った。』

 

 

続きは次回更新にて!