「完璧主義」
こんにちわ~ ゆきぴです。
今日から小説を書いていきたいと思います。
ブログで小説を書くのは初めての試みですが、ウキウキしています。
今まで書き溜めてあったものはあったのですが、それをオンライン上で発信していくのは初めての作業です。
実は、ブログを始めた切っ掛けというのは、僕のすぐ下の弟の影響が大きいのです。
「書き溜めておくだけではもったいない」という風に言われ、僕自身書いてみたいという思いも強かったので、こうしてブログでの発信を決断しました。
タイトルは「完璧主義」です。
読んでくださったら嬉しいです。感想などあればコメントしていただければ、尚喜びます。
「完璧主義」
『コーヒーは嗜好品だから、そんなに飲むものではないと言われ、渋谷満は看護師に悪態をついた。看護師ならコーヒーのもたらすなにがしの好ましい作用を知っているはずだと反発したが、看護師は渋谷を無視したように見えた。この病棟で患者に必要なのはコーヒーの「なにがしの作用」なんかではなく、安定剤なのだ。
そうここは精神病棟。
医者は精神科医であり、患者は精神疾患者だ。医者は患者に安寧を与え、あるいは求めるのかもしれない。しかし患者はそんなものに興味などなく、常に環境に不満を抱き、刺激を求める。
医者は毎日「効率」と「効果」のことだけを考えていれば良い。ほかのことを考えている余裕などない。
渋谷は悪態をついたかと思えば自分は不幸者だと嘆いているようにも見えた。
「おい」
自分のことを呼んでいるのだと気づいたのは、周りに他に誰もいないということに気づいたからだ。
誰かいれば無視することができるが、誰もいないとなれば無視できない。面倒なことになるからだ。
「なに?」
おい、なに、だけで疎通が取れるのはまだましなコミュニケーションだ。
ここではほかに必要な言葉は「余計な言葉」であり、トラブルの元だと知っている。
「タバコ持ってるか?」
私が喫煙者だとわかって聞いてきたのだろうが、そういうやり取りは禁止されている。
持ってない、と答えたが、実は持っている。
彼はまた悪態をつくのかと思いきや、喫煙所へ向かい、タバコを他の患者からせびるつもりらしい。
私は喫煙所の中が見えるガラス窓から、面白半分で彼の行動を観察した。
中には五十代後半か六十くらいの男性患者がいた。まだ私はあまり話したことがない患者だ。
渋谷が中へ入るなりその男性患者は、まだ吸えるタバコを水の入った灰入れに捨て、そそくさと退場した。
トラブルになる前のトラブルだ、と私は思った。予想通り渋谷は喫煙所のソファをけり出し、ちくしょー、と怒声をあげて出て行った。
私もタバコを吸えなくてイライラする気持ちはわかるが、ものに当たったり怒声を上げたりするほどではない。
「なあ、あんた麻雀出来るか?」
いつの間にか私のすぐ横に、先ほどの男性患者がいて、そう声をかけられた。
「できますよ」
「やらないか? あと二人できるやつ見つけて、声をかけてくれたら助かる」
「いいですよ。お金はないですけど」
「しゃばで大丈夫だ」
トラブルの次はギャンブルのようだ。
だが、この人はギャンブル依存症には見えない。
それで精神科に入院したわけではなさそうだ。
ただ単に刺激が欲しいだけなのだろう。先程の渋谷とは違う刺激が。
「名前、なんていうんですか?」
「坂本だ。ありきたりな名前だろ。あんたはなんていう」
「某は何某のなんとかと申します」
「そうか。言いたくなきゃ別にいいが。あんた若く見えるが、知恵遅れとかでもないだろ。麻雀ができるくらいなんだから」
「知恵遅れ」という言葉を聞くのは初めてだったのでやはり知恵遅れなのだろうか。いや、そう思うということはそうではないということだ。なんとなく響きからして差別用語っぽかった。昔の言葉だろうか。まあ、どうでもいい。私は、男なら麻雀ができて当たり前だと思っている。それも差別だろうか。
坂本何某は去って行った。
私の病室には麻雀ができる人がほかに二人いる。ちょうど最近、あと一人麻雀出来る人がいればなぁなんて、病室で話していたところだ。もう一人私の病室に患者がいるが、その人はどちらかというと将棋をたしなむ人らしい。
きっと二人はこの吉報を喜ぶに違いない。』
続きは次回更新にて。